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The Strange Ones ザ・ストレンジ・ワンズ/変な2人

アメリカ映画 (2017)

14歳のジェームス・フリードソン・ジャクソン(James Freedson-Jackson)が主演するクライム・サスペンス的なロードムービー。映画のストーリー自体はシンプルなのだが、フラッシュバック映像や、起きてしまった現実を「なかったこと」にしようとする願望の映像が交叉し、極めて分かりにくい構造になっている。しかも、主人公であるサムとニックの関係も、示唆はされてはいるが非常に曖昧(映像で直接表現されるものは僅か)で、それが 映画をますます分かりにくくさせている。私も、「Taylor Holmes」というサイトで非常に詳しい分析を読むまでは、映画の本質を理解することはできなかった。このサイトの分析ですら、投稿者の1人の異論により(私もそれに賛成だが)、すべてが正しいわけではない。この種の映画は、「観客の解釈に任せる」という芸術系の作品ではないため、監督だけが正解を知っているという作り方が正しいとは思えない。

この映画については、概略説明は行わない。代わりに、あらすじの最後に、画像を時系列順に並び替え、簡単な説明を加えたものを掲載する(それが、真のあらすじになっている)。

ジェームス・フリードソン・ジャクソンは、『コップ・カー』(2015)に続き2つ目の主演映画。その時も変わった持ち味の子役だと思ったが、今回は、その特異性が遺憾なく活かされ、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭でブレイクスルー演技賞を獲得した。下の写真は『コップ・カー』。
  


あらすじ

映画の冒頭、夜の闇の中を1台の車が走る。場面はすぐに切り替わり、一連のフラッシュバックが始まる。映されるのは、①サムが部屋のドアを開けて廊下から居間に入って行き(1枚目の写真)、②居間に入ったサムがソファを見、③見下ろすサムの顔のクローズアップ(2枚目の写真)、④床に倒れた男(父)の大きく見開いた目(3枚目の写真)、そして、⑤サムが炎に包まれた家の前に立ち(4枚目の写真)、⑥背後から「サム」と声がかけられ、車のヘッドランプの前でサムが猫を抱きしめる、という5つのシーン。過去のフラッシュバック映像は、左側に山吹色の帯をつけて区別する(タイムラインに沿った映像はの帯)。そして、再び現在。走る車の中。空は明るくなりかけている。ただし、森の中を抜ける道なので、ほとんど木しか見えない。後部座席に横になったサムの視点から見た映像だ。そして、オープニング・クレジットが始まる。
  
  
  
  

GSに着いたニックは、後部座席のサムに、「よく眠れたか?」と声をかける(1枚目の写真)。「あんまり。どこなの?」。「さあな」。ニックはトイレに行き、サムはコンビニでぶらつく。その後、サムは、食堂の入口で1人でいたところを係員に呼びかけられる。「一人なのかい?」。「兄さんと一緒」。「そうか。どこかで楽しもうってわけだな」。「キャンプに来たんだ」(2枚目の写真)。会話は続くが、ニックは遠くからそれを見ている。その後、ニックがゴミを捨てに行っている間に、サムのスマホが鳴る。取り出したスマホは液晶が割れている。メッセージは、「電話して」「どこなの?」。そして、「r u dead?(死んでる?)」(3枚目の写真、矢印)。随分変な質問だ。サムは横に置いてあったゴミ入れのドラム缶にスマホを投げ捨てる。再び動き出した車。サムは、人前に姿を見せたくなかったニックのために買っておいたサンドイッチを、運転中のニックに食べさせる。
  
  
  

夕方になり、二晩続けての運転は無理なので、ニックは田舎道に車を停めて仮眠を取ろうとする(1枚目の写真)。「ちょっと休む。いいな?」。サムは、これから向かう山小屋について尋ねるが、疲れたニックは質問を遮り眠る。いつしかサムも眠る。ここで、再びフラッシュバック映像が流れる。映されるのは、(1)前回のフラッシュバックの②(2枚目の写真)、(2)前回のフラッシュバックの③、(3)床に落ちた缶ビール(中身がほとんど流れ出ている)(3枚目の写真)。前回と似ているが、缶ビールだけは新しい。ここで紹介する画像は、重複を避け、以前に使わなかったものを優先する。
  
  
  

フラッシュバックは続く。(4)自室の窓からニックの家を見るサム(1枚目の写真)、(5)自室でペットの猫を撫ぜるサム(2枚目の写真)、(6)決心したサムは部屋を出ると、自宅のすぐ前にあるニックの家に向かって歩く(3枚目の写真)。
  
  
  

(6)サムは ニックの家に勝手に入り、居間でニックを待つ(1枚目の写真)。シャワーの音が聞こえる。テーブルの上には、写真が数枚置いてある。(7)サムは立ち上がると、シャワー室に近寄る(2枚目の写真)。(8)半透明のビニールカーテンごしに見えたのは、背を向けたニックが右手で自慰行為をする姿(3枚目の写真、矢印)。ここで、サムの目が覚める。サムは、運転席で寝ているニックの鼻頭に触ってみる〔(7)と、最後の行為は、サムがホモセクシャルである可能性を示唆している/自慰行為をしているのでニックはゲイでないという説もあるが、それは疑問〕
  
  
  

夜中に起きたニックは、車を動かしてドライブインに入る。客はほとんどいない(1枚目の写真)。ニックが、「他に何か食べるか?」と訊くが返事はない。「楽しんでるか?」。「うん」。「そんな風に見えないけどな」。「ちょっと変な感じ」。「変って?」。「たとえて言うと、眠ろうとするんだけど、考えるのをやめられない。眠ってると思うと、まだ目が覚めてるって分かる。ホントなのか夢なのか、他の何かなのかも分からなくなる、って感じ」。「何を考えてる?」。「知ってるよね」。「俺の意見を知りたいか? 考えたり、夢みたりするのをやめたれりゃ、ただ止めろ」(2枚目の写真)「頭の中のものは、望んだ時にだけホントになる。だから、ホントじゃないと決めちゃえばいい」。「何がホントじゃないの?」(3枚目の写真)。「全部だ。この旅を始める前に起きたことすべてだ」〔この会話は非常に奥が深い〕。支払いをする時、店に警官が入って来たので、ニックはサムにお金を渡し、支払いに行かせる〔ニックは 警官を避けている〕
  
  
  

ドライブインを出て、真っ暗な道を進むニック。ヘッドライトの届く先は短い。道路の真ん中で倒れている牡鹿が いきなり目に入る。避けようとブレーキをかけハンドルをきるが間に合わない。大きな動物にぶつかったため、車は動かなくなる。そのまま明るくなるのを待ち、自分では直せないと分かると、2人は荷物を持って道路沿いに歩き始める。しばらく歩くと、プール付きのモーテルが見えてくる(1枚目の写真)。建物の電気は消え、泊まっている車はゼロ、プールに水は張ってあるが使われているようには見えない。一方、管理棟の中では、女性が朝一番の仕事として、掃除機をかけていた。そして2人の男性がプールを覗いているのに気付く。ニックはプールサイドのチェアに座る。サムは、「閉まってるの?」と訊く。「多分な」。そこで、サムはシャツを脱いでプールに飛び込む。その時、「失礼ですが」と声がかかる。映像は水中のサムに切り替わり、水面から顔を出すと、ニックに「こっちに来い」と言われる。「この人はケリーだ。ここで働いてる」(2枚目の写真)。ケリーが、「何て名前?」と尋ねる。サムは、「ジェレマイア」と嘘をつく(3枚目の写真)。ニックは故障した車のことを説明し、ケリーは修理屋が近くにあるから、電話して、そこまで乗せていってあげると親切に言ってくれる。
  
  
  

その後、客室の1つに入った2人。シャワーのカーテンレールには、サムの半ズボン(履いたままプールに飛び込んだ)が干してある。サムは、バスタオルで体を拭いているが、背中には大きな打撲痕が赤黒く残っている(1枚目の写真、矢印)。窓際のベッドに服を着たまま横になったニックは、「早く服を着ろ」と命じる。次のシーンでは、修理屋の車がエンコした赤い車を牽引していく準備をしている。ケリーはニックと親しげに話している(2枚目の写真)。サムは、面白くなさそうにそれを見ている。ケリーのピックアップトラックでモーテルに帰る途中でも、1人だけ荷台の乗せられて不満そうだ〔嫉妬?〕(3枚目の写真)。
  
  
  

その日の夜。ツインベッドルームのシャワールーム側のベッドの右に座ったサムは、ニックに、「彼女に気に入られたね」と嫌味を言う。「優しくしてるだけだ」。「やるっきゃない。その気あるんだろ? やれよ。彼女の穴に突っ込めよ」(1枚目の写真)。ニックは、暴言を鼻で笑い、「すぐ戻る」と部屋を出て行く。ニックがなかなか戻らないので、サムはTVをつける。リモコンでチャネルを変えていると、いきなり火事の映像が映る。冒頭のフラッシュバックの4枚目の画像とそっくりだ(2枚目の写真・左)。TV:「数日前、ニュー・ブライトン〔ペンシルベニア州〕で起きた2階家屋の全焼した件で、今夜詳しいことが分かりました。発見された男性の焼死体は、家の持ち主でした」。そう言うと、男〔サムの父〕の写真が映される(2枚目の写真・右)〔他には遺体がない+ニックが不在→サムはニックに誘拐されたと警察は判断〕。サムは、即刻TVを消してしまうので、それ以上のことは何も分からない〔この時点では、男が「サムの父」だということも、観客には分からない〕。ようやくニックが戻って来る。部屋の中は真っ暗だ。着替えたニックは、気配を察し、「起きてるのか?」と訊いて洗面台の電気を点ける。そして、ベッドに横になると、サムの髪を撫ぜながら、「大丈夫か?」と尋ねる。「触るなよ、気持ち悪い」。サムから離れたニックは、「今はオフシーズンだそうだ。だから、あと2・3ヶ月は誰も来ない」(3枚目の写真)。「で?」。「タダで泊まれるんだ、好きなだけ」。そして、「ここには誰も来ない」し、「思ったように事が進んでいない」から、「しばらくここに留まって、うまくいくかどうか見てみることにする」と言う。サムは、ニックの山小屋に行けるとばかり思っていたので、この「転身」はショックだった〔ニックはケリーが気に入り、ここに留まる口実を考えた/ニックがゲイでない証し〕
  
  
  

翌朝、サムはニックが起きる前に部屋を出て管理棟に行く。朝の早いケリーは、もうそこにいて、コーヒーは自由に飲んでいいと言ってくれる。そして、「あなたたち、他に必要なものはない?」と親切に尋ねる。「ううん、ないよ」。「洗濯室の使い方教えるわね。ここにいる間、着る物を洗わないといけないでしょ」。「いいよ。もう出て行くから。つまり、ここにいないんだから、無意味だろ」。「ホントなの? あなたのお兄さん、しばらくここにいるって言ったわよ」。「嘘だよ」。「なぜ嘘つくの?」。「嘘付きだから」。「いい人じゃないの」。「違うよ」。否定する理由を訊かれ、サムはさらに強い嘘を重ねていく。「第一に、彼は女性が好きじゃない。ゲイなんだ。女性じゃ勃起しない」。「それがお兄さんに対する言葉?」。「彼はあんたを利用しようとしてるんじゃないかな。バカだと思ってさ。何でも言うことを聞いてくれるから」。ケリーの笑顔がだんだん曇ってくる。「彼のこと、何も知らないよね。だから、心配してるんだ。こんな人里離れた所で働いてて、もし彼が言った通りの人間じゃなかったら、どうするの?」(1枚目の写真)「誘拐犯や殺人犯じゃないって、どうして分かる? あんたをレイプしたり殺したり、あるいは、想像を絶するようなことをしないって、どうして分かる? もし、僕があんたで、彼のような男と出会ったら、すぐ逃げ出すよ」(2枚目の写真)。これほどひどい中傷はない。冷静になれば、こういうことを述べるサムの精神状態を疑うべきだろうが、恋心がこっぱ微塵に砕かれたケリーは、強い疑心暗鬼に襲われる。この会話は、サムの異常性、執拗なまでのニックへの執着の分かるシーンなので、台詞をほぼ全訳した。部屋に戻ってきたサムに、ニックは、「彼女に何て言ったんだ?」と訊く。「バカだって言ったよ。あんた以上のバカだって」。ニックはサムの頬を激しく叩く(3枚目の写真、矢印は叩く直前のニックの手)。
  
  
  

ケリーは、2人が部屋を離れたのを確認して、こっそり中を覗く(1枚目の写真)。ツインベッドなのに、使われているベッドは1つだけ(2枚目の写真)。このことから、ケリーは、ニックがゲイだというサムの言葉を信じてしまう。しかし、もしそうなら、その後にサムが使った「あんたをレイプしたり」という部分が矛盾していることまでは気付かない。車の修理が終わった段階で、ニックは早々に立ち退きを求められる。車に戻った2人。なぜかニックは、それ以上サムを怒らない。逆に、「俺を憎んでるか?」と訊く。サム:「僕を殺しちゃえよ。どこに埋めても文句は言わない」。ニック:「俺を殴りたいか? そしたらすっきりするか?」。サムはニックの頬を叩く(3枚目の写真、矢印は叩いた後のサムの手)。泣きそうな顔のサムを見て、ニックはすべてを許してやる。
  
  
  

ニックは、山小屋の近くの車止めで駐車する(1枚目の写真)。ニックは、右手に大きなバッグ、左手で猟銃を持つ。サムは、肩にリュックを背負い、左手で大きな荷物を抱えている。この状態で、途中、3人組に遭う。オフシーズンなのに、「射撃訓練をしようと思って」と答え、夕方に近いのに、たくさんの荷物を持っていながら「すぐに引き返す」と言うニックに、3人は不信感を抱く(2枚目の写真)。中年女性に名前を訊かれたサムは、「ジェレマイア」と答える。「半ズボンだから、ツタウルシには気をつけるのよ」と注意されても、心ここにあらずの状態。その時の隠れるような目線も、不信感を煽る〔伏線〕。2人は、まだ夕陽の輝いているうちに山小屋まで辿り着くことができた(3枚目の写真)。
  
  
  

夜になり、焚き火の前で。サムに「最後にここに来たの、いつ?」と訊かれたのに対し(1枚目の写真)、ニックは「お前さんと同じくらいの時だ。もう少し上だったかな。夏にはいつも来たし、秋にもだ。最初は嫌でたまらなかったが、だんだん好きになった」と答える。次のシーン。ベッドで横になったサムが、突然、「見るのやめろよ」と呟く。ニックには何のことか分からない。「何だ?」。「あの猫、気味が悪い。きっと取り憑かれてるんだ。転生したんじゃないのかな」(1枚目の写真)「30代の男… きっとあいつ〔=父〕だ」(2枚目の写真)〔サムが家で飼っていた黒猫は車に乗せられなかった。この映画では、黒猫が何度も現れるが、山小屋は永らく使われていなかったので、この黒猫は、2人と一緒にどこからか入り込んだのか?〕
  
  
  

翌日、雨の降る森の中で、ニックはサムに猟銃の撃ち方を教える。次のシーンでは、木漏れ日の中を2人が歩いているので、翌々日であろう。ニックは猟銃を肩にかつぎ、その後をサムが歩いている。ニックが連れて来たのは洞窟の入口。「見てみろ」。「わお」。「中で一晩寝たことがある」(1枚目の写真)。そして、その時の状況を説明する。「親爺から逃げてたんだ。ここは深そうだった。中にいた時のことは忘れちまったが、出て来たら、違った感じがしたことは覚えてる」。「どんな風に?」(1枚目の写真)。「別人になったみたいな感じかな」(2枚目の写真)〔最重要な言葉〕
  
  
  

サムが池に入って涼んでいると、遠くの岸に誰かが立ってこちらを見ている(1枚目の写真、矢印)。サムが何かを見つめているので、ニックは「どうした?」と声をかける〔ニックの位置から岸は見えない〕。サムは、「別に」と答え、見たことを黙っている〔これは、追われる身の2人にとって無用心な態度〕。その後、森の中を歩いていると、遠くで枝が折れるような音がする。「あれ何?」。「たぶん熊だろう」。ニックは、熊が寄ってこないようにと、空に向けて威嚇射撃をする。2発目を撃った時に、新たな銃声がして、ニックの左腕が撃たれる。ニックは、サムに「逃げろ」と命じる。その時、また銃声がして、今度は近くの木の幹に当たる(2枚目の写真、赤の矢印は血の付いた指、黄色の矢印は幹に当たった銃弾)。サムは必死になって走る。ニックは姿勢を低くし、無事な方の手で猟銃を抱えて洞窟に行き、暗がりに逃げ込む。最初に洞窟に近づいた警官は胸を撃ち抜かれるが、その後、4人の警官が洞窟を囲む(3枚目の写真、矢印は最初に撃たれた警官、矢印の上に3人の警官がかすかに見える)。そして、森の中に、4発の銃声が響き渡る。
  
  
  

森の中をさまよったサムは、開けた場所にある納屋を発見し(1枚目の写真)、隠れるように逃げ込む。どのくらい時間が経ったかは分からないが、そこにサムより年上の2人が入って来て、隠しておいた何か〔タバコか麻薬か?〕を出そうとする。2人うちの1人が、2階部分〔納屋なので、一部が2階になっている〕で気配を感じストップをかける。そして、2階に向かって「おい」と声をかける。「そこにいるのは誰だ?」。動く気配はするが、返事はない。「新入りか?」「俺たちの仲間じゃなさそうだ」。サムは、「水ある?」と声をかける〔飲まず食わずで歩き通した〕。次のシーンでは、サムがワラの上で丸くなって寝ていると、足音がして3人が2階に上がってくる。老年の男が「ほら、飲んで」と言ってポットを渡す(2枚目の写真)。さっきの2人が、リーダーを呼んできたのだ。やっとの思いで体を起こしたサムは、ポットからガブ飲みする。「名前を教えてくれるか?」。「ジェレマイア」(3枚目の写真)。「冗談だろ」。若者の1人が、「俺の名前じゃないか」と言う。リーダー:「彼も、ジェレマイアだ。わしはゲアリー、こっちはルーク」。そして、「立てるか?」と訊く。
  
  
  

次のシーンでは、4人が野原を歩いている。そのうち、背後に 草刈をしている若者が複数映り、4人の前方にはさらに多くの人がいる。サマーキャンプのようにも見えるが、よく分からない(1枚目の写真)〔「Taylor Holmes」のサイトでも、「ここが何だが教えてもらえるとありがたい」と書いてあるので、アメリカ人にも馴染みのないものらしい〕。ちょうど夕食の時間だったようで、サムは、そのまま食堂に連れて行かれる。メニューは、セルフサービスのスパゲティ・ナポリタンだけ。サムは皿に山盛りにしてガツガツと食べている。しばらくすると、横にリーダーのゲアリーが腰を下ろす。「食べ終わったら、ジェレマイアがシャワーの場所を教えてくれる」。そして、ジェレマイアには、「きれいな服を出してやれ」と命じる。サムには、「さっぱりしたら、話そう。いいな?」(2枚目の写真)。「いいよ」。そのキャンプ場には、分散して小さな小屋が建っている。ジェレマイアはサムをそのうちの1棟に連れていく。そして服を渡し、2段ベッドはどちらも空いているので、好きな方を使えばいいと教える。そして最後はシャワー。次のシーンはゲアリーの小屋の前。辺りは真っ暗。犬が1匹いる。ゲアリーは、「犬か猫は飼ってる?」と尋ねる。「猫を1匹」。「1匹だけか?」。「飼ってるのは1匹。数匹のノラにも餌を」。「動物が好きなんだな。他に、君自身について話してくれることは?」。サムは黙っている。「いいか、何か言ってくれんと、君を助けられないだろ。どこらか来たか、話してくれるか?」。「森から」(3枚目の写真)。「森? 何が言いたい?」。「森の中にいたんだ… キャンプして」。「誰と?」。「兄さんと」。「兄さんは、今どこにいる?」。「知らない」。ゲアリーは、それ以上訊いてもラチがあかないと思い、明日の朝 話そうと言って小屋に入ろうとする。そこで考えを変え、「もう一つ尋ねてもいいか」と訊く。「いいよ」。「本当の名前は何だ?」。サムは、また無言に戻る。
  
  
  

翌朝、サムがゲアリーと会ったのかは分からない。場面は、いきなり、同室の2人が作業に出かける準備をしているところから始まる。ジェレマイアが、「今日は草刈りの日。ローテーションなんだ。庭作業したことあるか?」と訊く(1枚目の写真)。「ううん」。ルークは、「お前、何かしたことあるんか?」と嫌味を言う。ジェレマイア:「教えてやる。できるさ」。16人のグループで畑に向かう。サムも行かざるをえない(2枚目の写真)。全員が広大な畑に分散してクワをふるっている。疲れたサムは、水を飲もうとして、畑の上の野原に置いてあるポットに向かう(3枚目の写真)〔この時は気付かないが、きわめて重要なシーン〕
  
  
  

サムはシャワーを浴びて 体についた土ホコリを洗い流す。朝 目を覚ますと、同室の2人はもう服を着ている(1枚目の写真)。ジェレマイア:「やっと起きたか。ゲアリーが話したがってるぞ」。サムは、1人でゲアリーの小屋に向かう(2枚目の写真)。途中のベンチで座っている女の子から、ささやき声が聞こえる。「あの子、犯罪者なのかな?」「警察が来たわ」「危険よ」。サムが小屋に近づくと、小屋の前にパトカーが停まり、3人が外に出て、うち1人の女性がゲアリーと話しているのが見える(3枚目の写真)。サムは立ち止まる。女性:「あそこにいるのが、その子?」。サムは180度向きを変えると、元来た方に歩き始める。歩くスピードはだんだん早くなり、「ジェレマイア!」とゲアリーに呼ばれると、走り出す。そして、全速で森へ。
  
  
  

結局、サムは捕まり、ゲアリーの小屋に連れて来られる。外では、ゲアリーが、何事かと集まってきた若者たちに戻るよう指示している(1枚目の写真)。サムの前に座っているのは女性。制服ではないので、児童福祉関連の係官であろう。「小さいのに走るの早いのね。ずっとあなたを捜してたのよ」。「彼はどこ?」。「死んだわ〔He didn't make it〕。でも、あなたが見つかって良かった」。サムは何も言わない。女性は、心配して「サム?」と訊く。サムは、ニックが死んだという知らせに限りなくショックを受けていた(2枚目の写真)〔渾身の演技〕。やっとの思いで、「トイレに行ってもいい?」と頼むと、洗面台の前に座りこんで泣く(3枚目の写真)。
  
  
  

いよいよ 事情聴取が始まる。「あなた方2人は、森の中で何をしてたの?」。「キャンプ… つまり、彼は僕に、そう言えって…」。次に、係官は、不快に感じるかもと断った上で、焼ける前の家の写真や生前の父の写真を見せて確認をとる。「ママは?」。「どこにいるか知らない」。「パパとの関係は?」。「いいけど…」。「厳しかった?」。「かもね。でも、他の親ほどじゃないよ。たぶん…」。ここで、係官は話題を変える。「あなたのお友達のサラの話では、いつもニックの家にいたそうね」。「そうだよ。パパが仕事で帰りが遅いから、ニックが好意で見ててくれたんだ。お向かいだしね」。「どのくらいの期間?」。「引っ越してきてから」。「2年前だったわね?」。「かもね」。「パパを知ってる人から聞いたんだけど、新しい仕事に就こうとしてたとか。州の反対側で。知ってた?」。「引っ越すことになってた」。「ニックはどう思ってた?」。「気に入らなかった。僕と一緒に住みたがってた… だから、彼はやったんだ」。「何を?」。「だから、僕のパパを殺したんだ」(1枚目の写真)〔ミスディレッションの決定的な一言〕。「あの晩のことを話してくれる?」。サムの話は、フラッシュバック映像の形で示される。(i)廊下に立っているサムが、ニックの後姿を見ている(2枚目の写真、矢印はニック)。この映像は、あらすじ冒頭のフラッシュバック①の映像にニックがプラスされたもの。だから、ニックが殺したように見える。(ii)居間に入ったサムに、ニックは「見るんじゃない」と言って、死体を白いシーツで覆う。そして、(iii)ニックが「荷物をまとめてこい」と命じる。この(ii)と(iii)から、このシーンが殺人の瞬間ではなく、実は、少し時間が経過してからだということが分かる〔そういう意味では、あらすじ冒頭のフラッシュバック①の映像とはタイミングが少しずれている〕。(iv)ニックの車に乗ったサムがリヤウィンドを見て、「待って、停まって」と頼み、急停車した車から走り出たサムが路上にいた飼い猫を拾い上げて抱く。そして燃えている家を見る(3枚目の写真、矢印は黒猫)。このシーンの直後に、あらすじ冒頭のフラッシュバック⑤の炎の前の黒い影の印象的な映像が挿入される。(v)そして、その映像にニックの影が加わる(4枚目の写真)。ニックはサムをつかんで車まで連れて行き、猫は路上に置き去りにされた。ここで、現在に戻り、係官は「OK」と言う〔係官は、ニックがサムの父を「殺した」時の状態を納得する〕。「ニックは、あなたに触ったりした?」。サムは何も答えない。
  
  
  
  

サムは、地元のニュー・ブライトンに連れ戻され、病院で検査を受ける。肛門内の検査(1枚目の写真)を受けるが、「性的虐待の物的証拠はありません。しかし、ご存知のように、証拠が残ることは稀ですから」という診断結果。その晩、サムが病室で過していると、TVのニュースに森で遭った3人組がインタビューに答えている(2枚目の写真)。「2人はどこか変だったけど、それ以上は考えませんでした。そしたら、家で見たTVで彼だと分かったんです。すぐに電話しました」。そこに、サラが母親と一緒にお見舞いに訪れる(3枚目の写真)。手に持っているのは、クラスのみんなが書いたメッセージの入った封筒。
  
  
  

サムは、サラの家に連れて来られる。孤児院に行くまで一時的に預かろうとしたのかもしれない。そこでのサムとサラの会話は、もつれた映画の展開をはっきりさせる非常に重要な内容を複数含んでいる。「とっても変な気分。あなた、今は私の部屋にいるけど、数日前までは死んだと思ってたのよ」〔サムが捨てたスマホのラスト・メッセージ〕。そして、最初の重要な情報。「あなたが、彼のこと ホントに知らなかったなんて、クレイジーよね。ママは、彼が一度デートするのを見たって。同じ年頃の女性とよ。彼が、あんな変な男だと分かってショックよね」〔ニックが年頃の女性とデート→ニックはゲイではない?〕。その後は、興味本位のおぞましい質問。「彼が一方的にするの? それとも させられるの?」。「どっちもかな」(1枚目の写真)。「可笑しいと思わない? 学校中が、私たちカップルだと思ってるわ。そう思わせて黙ってけど」。そして、その後、2番目の情報。「これも話しておきたいの… 警察には言わなかったけど… あなたとパパのこと」(2枚目の写真)「警察は、何とかやって、私たちのメールを読んじゃったの」。「読んだって、何を?」。「あなたが引っ越したくなくて、パパに死んで欲しいと思ってること」「まさかでしょ? だから、警察には冗談だろうって話したの、ティーンエイジャーにありがちな。それに、あなただって、秘密にしたいだろうと思ったから」「私、何があったか 知りたくなんかない。それに、何があろうと構わないの… あなたが本気でも… たとえ〔Even〕…」(3枚目の写真)〔サムが係官に「だから、僕のパパを殺したんだ」と言い、殺意をニックのせいにしたのは嘘っだ〕。「たとえ」の後は、「あなたがホモでも」と言おうとしたのかもしれない。顔を見合す2人。そして、サムは感謝の意味でサラにキスをする(4枚目の写真)。しかし、本気になったサラがサムのズボンのベルトを外そうとすると、サムは「やめろ」「離れろ」と拒絶する。ここで3番目の最も重要な情報。がっかりしたサラは、「みんなには想像もつかない。でも、私には分かってる〔I get it〕。だって、はっきりしてるから」と、見通したように言う。「何が?」。「あなたは、彼を愛してた。今でもね〔Are〕」(5枚目の写真)。「Whatever(勝手に言ってろ/そうかも、どっちにも解釈できる曖昧な言葉)」。
  
  
  
  
  

いたたまれなくなったサムは、翌朝早くにサラの家を出て行く(1枚目の写真)。明るくなった頃、サムは森の中を通る道を歩いていた。車通りの多い往復2車線の道路だ。ふと気がつくと、道の反対側に黒猫がいて、じっとサムを見ている(2枚目の写真、矢印)。サムは、この猫こそニックの転生に違いないと確信する(3枚目の写真)。
  
  
  

そして、ニックに励まされた夜のことを思い出す。場所はニックの家のソファ。サムのシャツがめくられ、背中の打撲痕が剥き出しになっている(1枚目の写真、矢印)。サムが父にひどく殴られたと訴えにきて見せたのだろう〔打撲痕の状態が、モーテルの写真と同じなので、2つの日付が接近していることを意味している〕。ニックは、「今度暴行を受けたら、自分で立ち向かうんだ。もし 俺がその場にいて、君に手を出すのを見たら、奴を殺してやる」と、抵抗する勇気を持つよう鼓舞する(2枚目の写真)。その後で、サムはテーブルの上に置いてあった写真〔少年と大きな牡鹿(死骸)が一緒に写っている〕に目をとめ、映っているのはニックかと訊く。「それは、親爺の最後の獲物だ。君ぐらいの年だった」。そう言うと、ニックはその山小屋で狩りをしたり魚釣りをする楽しさを話す。「きっと気に入るぞ。射撃や釣りを教えてやる。誰も俺たちを邪魔しない。他には植物と動物しかいない。素敵だろ?」。そして、サムの頭を優しく撫ぜる(3枚目の写真)。ニックのことが大好きなサムは、この言葉を真に受け、次に父から暴行を受けた時、ニックのように行動しようと考えた。そうすれば、ニックと分かれて、州の反対側で父に殴られなくて済むし、ニックと一緒に素敵な山小屋で暮らすこともできる。しかし、その結果、ニックは死んでしまった。そして、黒猫になって自分を待っている…
  
  
  

サムは車のことを無視して道を渡り始め、車にはねられて死亡する(1枚目の写真、矢印はぶつかった車)。その直後、空を飛ぶ鳥の群れが映される(2枚目の写真)。何の意味もないかもしれないが、サムが転生して鳥になったと言いたいのかもしれない。そして暗転。8秒続く真っ暗な画面の後、場面は一転して早朝のキャンプ場に変わる。ゲアリーの小屋をサムが訪れる(3枚目の写真)。2日目の朝だ。本編では、わざと抜かれていた時間帯になる。この時、サムはゲアリーを本当に訪れたのか〔そうなるとフラッシュバックになる〕、それとも、「もし、サムが来ていたら?」という仮定の状態なのかは定かでない。従って、これ以降の写真には、左側に空色の帯を付けて区別する。
  
  
  

入って来たサムに、ゲアリーは心を開いて話すように勧める。そして、サムが話し始める(1枚目の写真)。その部分はフラッシュバック映像になる。(a)サムが、自室で横になっている。するとノックがあり、父が、ドアの外から話しかける。「サム、起きてるか? 今 帰ってきた。さっきはごめんよ」(2枚目の写真)〔恐らく、家を出る前にサムに暴行し、部屋に閉じ込めた〕。「鍵は開けた。話したければいつでも来い」。次が、(b)あらすじ冒頭のフラッシュバック①と同じ映像。(c)サムは居間に入って行く。今度は、イスに座って半分寝ている父の後姿がはっきり見える。(d)サムはバットで父の首を強打する。(e)父は床に倒れ、手に持っていた缶ビールが床に溢れ出す(3枚目の写真)〔以前に出てきた缶ビールの映像は、中味が出きっていた〕。(f)あらすじ冒頭の②と同じ映像。(g)床に倒れて苦しむ父の顔(4枚目の写真)。(h)あらすじ冒頭の③と同じ映像。以上のことから、冒頭の映像は、この最後のフラッシュバックの一部を切り取ったものだと分かる。そして、父をバットで叩いたのもサムだということも。ここで、フラッシュバックは途切れ、ゲアリーが、そこまでの話を聞いて、「それは君の頭にあるだけだ。本当じゃない」と言う。「でも、ホントに思えてならない」。一瞬のフラッシュバック。(i)あらすじ冒頭の④と同じ映像。「絶対にやっていない。君が、望んでいるから本当のように思えるんだ」。最後のフラッシュバック。(j)サムはで父の顔をバットで殴りつけ、血しぶきがサムの顔にかかる(5枚目の写真)。「どうやったら やめられるの?」。「自分の心をコントロールしろ。やめようと望めば、やめられる」。
  
  
  
  
  

映像は、その日の午後に移行する。畑でクワを使って疲れたサムは、水を飲もうとして、畑の上の野原に置いてあるポットに向かう。本編ではそこで場面が切り替わるが、ここではサムは、野原に上がってポットの水を飲む。そして、紙コップを捨て、何気なく振り返って森の方を見る(1枚目の写真)。立ち上がってしばらく見ていると、黒猫がサムを見て森の中に入って行く。サムは、「お前、ここで何してるんだ?」とつぶやくと〔猫に対して〕、森に向かって野原を横切って行く。そして、森との境界。サムは臆せず、そのまま中に入って行く(2枚目の写真)。最後のシーンは、数日前、ニックに連れられて行った洞窟の前(3枚目の写真)。ニックの「別人になったみたいな感じかな」という言葉、ゲアリーの「自分の心をコントロールしろ。やめようと望めば、やめられる」の2つの言葉に支えられ、「父殺し」の過去を忘れて生まれ変わろうと、サムは洞内に入って行く〔警察に保護され、サラに生き恥をさらし、車にはねられて死ぬよりは、キャンプ場にいたときに告白し、自らを律していれば良かった、と言いたいのだろうか?〕
  
  
  

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